穀琲を開発するに至った

これまでの背景を

お話します。

Kokufee story

店主は中学生で菓子職人になると決めた人で、

高校を出ると製菓専門学校に進み、そのまま

洋菓子の世界に入って修行を朴訥と着々と重ねていました。

 

開業する前の最後の職場は兵庫県神戸市の弓削牧場で、

生命と自然あふれる現場で生乳やチーズを使った菓子作りに

打ち込んでいましたので、独立して開業を決めた時も

当前のように「洋菓子店」として開店しました。

 

 

お店を開きたいと思って選んで決めた最初の場所が

海を一望する神社の境内の一角という類のない御縁で、

周囲は旅館が並ぶ温泉観光地という立地だったこともあり、

喫茶を併設する形へと急きょ決めました。

 

開業当初は松林だった境内の眺め

 

洋菓子の製造しか経験がない店主。

洋菓子の業界にすら触れていない私。

喫茶をするということは飲みものが必要だという

そんな単純なことに気付くのにも疎いふたりでした。

 

喫茶を併設する洋菓子の小売店を開いたことで、

お客さまの反応を肌で感じられただけでなく

「なぜ今これを選ばれたのか」考えるようになりました。

 

お茶とお菓子を囲んで歓談する人の楽しそうな笑顔。

思い思いに召し上がってくつろぐ姿やお声をいただいて、

食べものと飲みものがつなぐ人の時間に触れられたのは

思ってもいなかった喫茶の恩恵でした。

 

そんな日々の中、お世話になっていた農家さんから

見たことのない珍しい黒い極小豆をもらいました。

固くて小さくて煮豆にならない特長に戸惑いました。

 

米と一緒に炊いても固く、赤飯にもならない。

煎って豆茶にして煮出して飲むようになりました。

お茶は美しい漆黒の水色で香ばしくて飽きないのです。

 

それが何週間か続いたとき、ふと気付いたのです。

体が楽に動いているし頭も重くなくスッキリしている。

ひんぱんに飲んでいたコーヒーも自然と飲まなくて。

 

店主は仕事柄か肩こりや頭痛がひんぱんにあって、

20年来ずっと偏頭痛の薬を手放せなかった人ですが、

そういえば最近まったく飲んでいないと言います。

 

常に財布に常備していた偏頭痛の薬が減っていない。

あれ? なんだろうね? ふたりで思い返しました。

もしかして、この黒薬豆のお茶かもしれない。

自分たちの体感と体調の変化が物語っていました。

 

この豆を辿って農業改良普及センターの方に話を伺っても

年月が経ち過ぎて分からなくなっていて、

無我夢中で黒薬豆のルーツを文献から調べました。

 

それと並行にカフェイン過多がもたらす弊害も

自分たちなりに調べて糸口を探し続けました。

 

体調が良いので黒薬豆茶を作っては飲み続けていたところ、

ある日、疲れ切った顔のお客さまが来店されたので、

お節介で黒薬豆茶をお出ししたら喜んで下さいました。

 

 

美味しいと言われる顔が本当にお元気になってきて、

このお茶売ってないの?といわれるようになりました。

 

そのとき、ハッと我が身を振り返ったのです。

テイスティング以外でコーヒーを飲んでいない自分が、

お客さまにコーヒーを提供している違和感に。

 

わたしたちは何を売っているのだろう。

お客さまのために本当に良いと思うものだろうか。

美味しいと思うもの、良いと思うものはなんだろう。

 

漆黒の黒薬豆茶を飲んでいるときに気付きました。

「この豆でコーヒーができるかもしれない」

 

頭の中に「穀琲」という言葉すら浮かんでいない中、

衝動に突き動かされていった始まりでした。

 

そして、黒薬豆に出会って12年が経ちました。

毎年、黒薬豆や玄米やもち麦を育てて下さっている農家さんは

漆黒の1杯を支えて下さっています。

 

穀琲 黒薬豆 穀ery

この3つの覚悟を思いの形として

わたしたちは商標登録の更新を続けています。

 

商標の申請を弁理士さんに一任せず、

書類を自らの手で作り上げたいというわたしたちに、

一般社団法人 兵庫県発明協会(INPIT)のTさんは

親身になって本当に一から申請を教えて下さいました。

 

通るのは難しいかもといわれていた名称ですが、

商標が認められたとき一緒に驚き合って喜んで下さいました。

 

無断で穀琲の名称を使用されていたときも、

どうしたらいいか分からないわたしたちに

対応の仕方や書面の作り方も教えて下さいました。

 

 

ことあるごとにわたしたちのお店の穀琲を

今も気にかけて下さって本当にありがたく思います。

いろいろな方に支えられた背景が今の穀琲なのです。

 

商標登録を更新し続けている商品だからこそ、

これから御縁のある穀ワリーパートナーの方に

ご理解の上でお付き合いいただければ幸いです。

どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

 

根っこや枝先に巡る養分のような。

金星と三日月と桜と

 

Kokufee  story を

お読みいただきまして

ありがとうございます。

 

わたしたちの中で

ずっと流れて巡っている

養分を気持ちばかり。

 

 

「努めて明るくいるのは、

大事なこと。そして、

なるようになると思うのも、

大事なことです。

忘れていいことは忘れていい。

明るく優しい気持ちで

お料理すれば

優しい味になるものだし、

優しいお料理を食べていれば、

なんとか元気に生きて

いけるんじゃないかしら」

 

日本料理研究家の鈴木登紀子さんの言葉より

 

 

和ンダーな一杯を

一緒に楽しみ合いましょう。

お待ち申しております。